2017年7月のRedmine開発状況

 •  分類:  •  前田剛

Redmine本体の開発について、2017年7月中の主な動きをピックアップして紹介します。

先月の概況

7月2日、200件の機能追加・修正を含むRedmine 3.4.0がリリースされました。新機能追加を含むfeature releaseとしては3.3.0以来およそ1年ぶりです。変更内容は下記ページでご確認いただけます。

3.4.0のリリース後、影響が大きめの不具合がいくつか報告されましたがすぐに修正が行われ、maintenance releaseである3.4.1と3.4.2が相次いでリリースされました。それぞれの修正点は下記ページでご確認ください。

現在は次期バージョンとして4.0.0と4.1.0の開発が進められています。3.4から4.0へと数字が大きく変化するのはWebアプリケーションフレームワークがRails 4からRails 5に更新されるためです。おそらく4.0.0はRails 5への移行が中心で新機能の多くは4.1.0で実装されると思われます。 もしそうであれば、4.0.0は案外早くリリースされるかもしれません。

2017年8月3日 22時30分時点のの各バージョンのチケットの状況は以下の通りです。先月までロードマップに表示されていた3.5.0はリリースがキャンセルされ、完了したチケットは4.0.0に、未完了のチケットは4.1.0に移されました。

バージョン 全チケット数 未完了チケット数
4.1.0 18 18
4.0.0 30 9
3.4.3 10 3
3.3.5 1 1

今月紹介するチケットの一覧です。

リポジトリにコミットされた機能追加・修正

今後の新バージョンに含まれることが確定した新機能やバグ修正のうち、重要なものを紹介します。

開発リポジトリのtrunkから取得した最新のソースコードで環境を構築すると、これらの新機能を試すことができます。

Rails support

Feature #23630: Rails 5.1へ移行

Redmineが使っているWebアプリケーションフレームワーク「Ruby on Rails」のバージョンが、Redmine 4.0.0では最新版の5.1にアップデートされます。Redmine 3.0から3.4まではRails 4.1または4.2が使われていました。

なお、Rails 5.1への移行の影響で、Redmine 4.0.0では相当数のプラグインが動作しなくなると考えられます。プラグイン作者の方は早めにテスト・改修に着手することをお勧めします。

Time tracking

Feature #26356: 新たな設定「作業時間の一覧で表示する項目」

Redmine 4.0.0では、作業時間の一覧で表示するデフォルトの項目を「管理」→「設定」→「時間管理」画面の設定「作業時間の一覧で表示する項目」で設定できるようになります。

チケット一覧では古くから「作業時間の一覧で表示する項目」という設定が備わっていました。同様の設定が作業時間の一覧でも利用できるようになります。

Patch #24005: 新たな設定「1日・1人あたりの作業時間の上限」「作業時間に0時間の入力を許可」

Redmine 4.0.0では、「管理」→「設定」→「時間管理」画面に新たな設定「1日・1人あたりの作業時間の上限」が追加され、各ユーザーが1日に入力できる合計作業時間に上限を設けることができるようになります。

例えばこの設定を 8 にすれば、1人のユーザーが1日に合計8時間を超える作業時間を入力できなくなり、おかしな値が登録されてしまうのを防ぐことができます。

SCM

Patch #26391: バージョン管理システム「Darcs」への対応を終了

Redmineはバージョン管理システムと連係する機能があり、現在はSubversion、Git、Mercurialなど計6種類のバージョン管理システムに対応していますが、このうちDarcsへの対応がRedmine 4.0.0では終了します。

実はRedmineのDarcsサポートは近年は実質的には動作していませんでした。というのも、Redmineが対応していたのは非常に古いバージョンのDarcsであり、2010年リリースのDarcs 2.5以降は利用できなかったのです。それにも関わらず不具合報告が数年間なかったことから、利用者はほとんどいなかったと考えられます。

Darcs対応の終了はRedmine本体やプラグインの開発者にとってはうれしいニュースです。これまで rake ci を実行してテストコードを実行すると10件前後Darcs関係のエラーが表示されて邪魔だったのですが、Darcsに関係するコードが削除されこの問題が解消されました。

Feature #26576: リビジョン詳細画面で変更されたファイルの一覧と差分をタブで切り替えられるよう変更

Redmine 4.0.0はリビジョン詳細画面で変更されたファイルの一覧と差分の表示をタブで切り替えられるようになります。これまでは「差分の表示」リンクをクリックしていました。相互の画面の行き来がしやすくなり操作性が向上します。

[現行バージョン]

[Redmine 4.0.0]

UI

Feature #22978: リンク先のチケットの注記をハイライト

Redmine 4.0.0では、チケットの注記へのリンクをクリックしてページを移動したとき、リンク対象の注記がハイライト表示されるようになりました。リンクされていたのがどの注記なのか一目で分かるようになります。

チケットやWikiで #123#note-4 のように記述するとチケット #123 の注記 3 にリンクできます。また、活動画面に表示される注記の更新からは該当の注記へのリンクが行われています。それらをクリックしてチケット画面の注記に移動したとき、どの注記にリンクされていたのか分かりにくいことがありました。

この注記をハイライトする機能によりリンク先である注記が明確になり、移動先の画面で目的の注記を見失うことがなくなります。

注目のチケット

現在は提案段階であり今後のリリースに含まれるかどうかまだ未確定ですが、最近動きがあったチケットの中で筆者が注目しているものを紹介します。

これらの中でRedmine本体に取り込んで欲しいものがあれば、ぜひ公式サイトにアカウントを作ってチケットに賛成のコメントを書くなどしてみてください。採用へ後押しとなるかもしれません。

Feature #10485: ガントチャートでコンテキストメニューを表示

Redmineはチケットの情報を元にガントチャートを表示する機能があります。ただ、ガントチャートに表示されている開始日や期日などチケットの情報を変更するためにはチケット画面に戻る必要があり操作性に難があります。

#10485#note-10 で提案されたパッチを適用すると、ガントチャート上でチケットの題名やバーを右クリックするとチケットの情報を更新できるコンテキストメニューが表示されるようになります。優先度、ステータス、担当者など一部の情報はガントチャートを離れることなく更新できるようになるほか、チケットの編集画面にもアクセスしやすくなります。

Redmineのガントチャートはその場で編集できないのが弱点ですが、このパッチがRedmine本体に取り込まれればその弱点が少し解消されます。

Feature #20481: ガントチャートの表示領域の幅をドラッグでリサイズ

Redmineのガントチャートでチケットの題名を表示する領域の幅は現在は固定であり、題名が長かったり親子チケットの階層が深かったりすると後ろが切れて表示されます。この問題を解決するために、幅をマウスのドラッグで自由に変更できるようにするパッチが 20481#note-3 で提案されました。

このパッチを適用するとマウスで幅を自由に変更できるようになり、切れてしまった題名の全体を表示させることができます。

Feature #26409: ガントチャートに担当者を表示

各チケットの担当者はプロジェクト管理を行う上で重要な情報ですが、ガントチャートには表示されていませんでした。これを改善するパッチが 26409#note-2 で提案されました。

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作成: 2017-08-03 23:00  •  分類: