2016年4月のRedmine開発状況
Redmine本体の開発について、2016年4月中の主な動きをピックアップして紹介します。
概況
新機能追加を伴う次期feature releaseとなるRedmine 3.3.0の開発と、原則として修正のみが行われるmaintenance releaseとなるRedmine 3.2.2と3.1.5の開発が進められています。
5月1日 16時の時点のロードマップ画面のチケットの状況は以下の通りです。
バージョン | 全チケット数 | 未完了チケット数 |
---|---|---|
3.3.0 | 89 | 13 |
3.2.2 | 11 | 0 |
3.1.5 | 2 | 0 |
3.3.0向けのチケットはすでに76件がクローズされています。このうち4月にクローズされたものは20件で、この後紹介するようにUIに関するものが目立ちました。
3.2.2と3.1.5は未完了のチケットがなくなっていて、また直近のmaintenance releaseから2ヶ月近くが経過していますので、そろそろリリースされてもよさそうに思えます。
機能追加・修正
リポジトリにコミットされた機能追加・修正のうちメリットや影響が比較的大きそうなものを紹介します。今回紹介するものはすべてRedmine 3.3.0のリリースに含まれることが確定しています。
attachments
Feature #22058: 画像ファイルのプレビュー画面を追加
現行のRedmineでは、チケットなどに添付されたファイルのうちテキスト形式のものはプレビュー画面で内容を確認できますが、画像ファイルに対してはプレビュー用のボタンが表示されず、ファイル名をクリックしてダウンロードができるだけでした。Redmine 3.3.0では画像ファイルのプレビューにも対応します。
この機能追加は操作の一貫性という点でも有意義です。例えばチケットに画像ファイルとテキストファイルが添付されている状況を想定してみます。現行バージョンではそれぞれのファイルをブラウザ上で表示するための操作がファイル形式により異なっています。
現行バージョンでは画像ファイルに虫眼鏡アイコンが表示されませんがファイル名をクリックすると画像が表示されます。一方テキストファイルを見たいときは、ファイル名をクリックするとダウンロードが始まるため虫眼鏡アイコンをクリックする必要があります。Redmine 3.3.0では画像表示用の画面が追加されるため、テキストファイルでも画像ファイルでも虫眼鏡アイコンのクリックという同じ操作でファイルの内容を見ることができるようになります。
UI
Feature #6204: プロジェクトメニューの項目「新しいチケット」を廃止
新たなチケットを作成するとき、現行のRedmineではプロジェクトメニューの「新しいチケット」をクリックします。しかし、プロジェクトに対する機能へのリンクが並んでいるプロジェクトメニューにおいて「新しいチケット」だけが異質であり、論理的におかしいという指摘が数年来以前からありました。また、チケットの新規作成のタブがあるのにWikiやニュースはないのか、という話にもなってしまいます。
4月20日にコミットされた r15344 では「新しいチケット」がプロジェクトメニューからが削除され、代わりに「チケット」画面に追加されました。
しかし、このままでは「チケット」画面以外を表示している場合は新しいチケットを作成するのに2回のクリックが必要です。「新しいチケット」タブはRedmine 0.7.0-rc1 (2008年3月リリース)で追加されましたが、チケットの作成が面倒という声が多かったためだろうと思います。
参考: Don'tStopMusic - redMine - redMine が流行らないたったひとつの理由(vs trac)
おそらく現状は #15880 で提案されている、チケット以外にもWikiやバージョンがプロジェクトメニューから追加できるようになる "global add button" を実装する前段階ではないかと思います。このボタンが追加されれば、チケットだけではなくニュースやWikiなどもプロジェクトメニューからの操作で追加できるようになります。
Feature #12909: ドラッグ&ドロップによるステータスやトラッカーの順序変更
トラッカー、ロール、チケットのステータス、カスタムフィールド、列挙項目の一覧をドラッグ&ドロップで変更できるようになります。
現行のRedmineでは「▲」や「▼」をクリックすることで項目を上下に動かして並べ替えを行いますが、項目が多いと目的の順位に移動するのに何回もクリックが必要です。ドラッグ&ドロップにより素早く並べ替えができるようになります。
Wiki
Feature #5536: 「新しいWikiページ」ボタンの追加
現行のRedmineで新しいWikiページを追加するには、別のページからこれから作るページの名前でリンクを作成してからそれを編集します。直感的な手順ではないため、初めてRedmineのWikiを使う人が戸惑うこともあったのではないかと思います。
Redmine 3.3.0では「新しいWikiページ」ボタンが追加され、1クリックでWikiページが追加できるようになります。
Feature #14937: ツールバーにシンタックスハイライト用の記述を挿入するボタンを追加
RedmineにはチケットやWikiにソースコードを記載したときに予約語などを強調表示するシンタックスハイライト機能があります。ただ、特にテキストの書式としてTextileを選んでいる場合、やや冗長な記述が必要です。
Redmine 3.3.0ではツールバーにシンタックスハイライト用の記述を挿入するためのボタンが追加され、2クリックで入力できるようになりました。
注目のチケット
今後のリリースに含まれるかどうかまだ未確定ですが、最近動きがあったチケットの中で筆者が注目しているものを紹介します。
Issues
Feature #7360: チケット一覧にデフォルトのカスタムクエリを適用 (Redmine Default Custom QueryプラグインをRedmine本体に取り込む)
チケットの一覧を開くと通常は全ての未完了チケットが表示されます。ただ、プロジェクトによっては異なる条件の一覧を初期表示にしたいことも良くあります。
2011年に作成され多くの人が賛同していたこのチケットに対して、今年3月についにパッチが投稿されました。特定のカスタムクエリが適用された状態を初期状態として設定できるようにするものです。
Katsuya HIDAKA氏によるRedmine Default Custom QueryプラグインをTakenori TAKAKI氏がRedmine本体向けのパッチにしました。
Project settings
Patch #22608: プロジェクト設定の「バージョン」にフィルタを追加
プロジェクト設定の「バージョン」タブに、バージョンのステータスまたはバージョン名によるフィルタを追加するパッチが提案されています。
一つのプロジェクトに数十個のバージョンを作るとこの画面に多数のバージョンが表示され、管理作業を行っているときに目的のバージョンを見つけるのが難しくなります。このパッチはクリック一つで終了したバージョンを非表示にするなど、設定画面に表示するバージョンを絞り込むことができます。